蟲狩り少女
しばらく重たい沈黙が続いていた。


誰もなにも言わない。


何を言っていいのかわからないのだ。


そんな中、光磨は無言でスッと立ち上がった。


あたしとお母さんの視線は自然と光磨へ向けられる。


「俺、帰ります」


光磨は笑顔のまま、そう言ってリビングを出て行ってしまう。


「ま……待って! 送って行く!」


命を恩人をこのまま1人で帰らせるわけにはいかない。


かと言ってこれ以上家にいられても、また心に隙間が開いてしまいそうで怖かった。


だから、あたしは光磨を送って行く選択をした。


そんなあたしを、お母さんも止めなかった。
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