蟲狩り少女
そうか。


大陸さんがあたしを抱っこしていたから、光磨はあたしを兄妹だと思い込んでしまったんだ。


それは無理のないような事に思えた。


「いろいろと勘違いをさせてごめんなさい。でも、せっかく姉妹が近くにいるのになにも連絡しないのはきっと後悔すると思ってここへ来たの」


清野カナはもう敬語を使っていなかった。


お母さんもそれでいい、というようにうなづく。


「ありがとう。真相がわかって楽になったわ。これからは2人で頑張りましょう」


そう言い、右手を差し出す。


清野カナはその手を握り返した。


「なんて言っても、蟲狩り師の母親って大変なんだからね」


クルっと顔をこちらへ向けてお母さんが言う。


「え、あたし?」


「そうよ? 周囲に理解してもらおうにもしてもらえないし、蟲の説明なんて誰も信じてくれないし」


「そうそう。光磨が蟲が見えるって言い出した時、一瞬心臓が止まったかと思ったわ。ついにこの日が来た! と思って」


どうやら疑いの晴れた母親たちの話題の火だねは、あたしたちへ向かっているようだ。


あたしと光磨はサッと目を見交わせる。


このままここにいては危険だ。


火だねはどんどん成長して、被害は拡大していくかもしれない。
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