シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々は彼に笑みを返した。永輝がカクテルグラスを六個、客席からよく見えるように長テーブルの中央に並べた。菜々は黒いナイロン製のフレア・バーテンダー・バッグを開けて、それぞれが使うボトルとティンを取りやすい位置に置く。そうして永輝が菜々の背後に立てばスタンバイOKだ。菜々がボトルを持ってうつむき、永輝がステージ脇の司会進行役の男性スタッフにうなずいた。司会の男性がマイクに向かって言う。

「次はバー・サンドリヨンのバーテンダーお二人によりますタンデム・フレア・ショーをお楽しみください。それではみなさん、ご一緒にスリー・ツー・ワン・ゴー、とフレア・コールをお願いします」

 司会が観客を見回して続ける。

「用意はいいですかぁ? それでは、盛り上がって行きましょう! ナナ・アンド・エイキ、タンデム・フレア・ショー! スリー・ツー・ワン……」

 男性がマイクを客席に向けて「ゴー!」と声が上がった直後、音楽が始まった。胸の高鳴るような音色に合わせて、前に立っている菜々がボトルを右手から左手へとトス。すぐ後ろでは永輝が同じ動作を逆方向に行う。続いて、頭上でボトルを回して手を離し、背面に落として左手でキャッチ。菜々が左へ、永輝が右へ一回転して、ステージに並んで立つ。次はビハインド・ザ・バック、半回転して観客に背中でキャッチするのが見えるようにビハインド・ザ・バック、そしてシャドー・パス。
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