シンデレラに恋のカクテル・マジック
(あれはどんな味のリキュールなんだろう……)

 そんなことを思っているうちに、永輝がリキュールドフレーズと書かれたそのボトルの中身を少量シェーカーに注ぎ、続いて深い琥珀色のコニャック、ストロベリークリーム、レモンジュースを加えてシェークを始めた。そうしてさっきとは違う、口の広いソーサー型と呼ばれるシャンパングラスにドリンクを注いだ。

「サマー・フェアリーです」

 菜々の目の前に、深いピンクにも紅にも見えるカクテルが置かれた。

「かわいい名前のカクテルですね」

 プリンセスとかフェアリーとか、そんなおとぎ話のような言葉がふと嬉しく聞こえる。菜々だって、子どもの頃はやっぱりプリンセスが好きだった。白雪姫、眠り姫、シンデレラ……。薄幸なお姫様を王子様が助けに来てくれる。菜々の王子様はどんな人だろう……。背が高くて優しくて、どんなときでも菜々を守ってくれる。そんなおとぎの世界を夢想したこともある。

 それでも、運命は残酷だ。今の菜々は、いつ来てくれるかわからない――もしかしたら来てくれないかもしれない――王子様など待ってはいられないのだ。運命は自分でどうにか乗り越えなければ。少なくとも今の菜々にはそうするしかない。
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