シンデレラに恋のカクテル・マジック
「お疲れ様でした」

 スタッフに声をかけられ、菜々は永輝とともにボトルやティンをすばやく片付けて撤収した。次はギターの引き語りがあるので、スタッフが手早く即席のカウンターを片付けていく。ステージの裏で、ボトルやティンを収納したバーテンダー・バッグのファスナーを閉めても、菜々はショーの興奮からまだ冷めなかった。頬は上気しままで、手が小刻みに震えている。

(今頃震えてどうするの……)

 菜々が苦笑したのに気づいて、永輝が彼女の手にそっと手を重ねた。

「お疲れ様。菜々ちゃんのおかげですごくいいショーになったよ」
「いいえ……永輝さんのおかげです。永輝さんがいろいろ教えてくれたから、私でもあんなにたくさんのお客様に楽しんでもらうことができたんです」

 菜々が感謝の気持ちを込めて永輝を見上げたとき、首からネームプレートを下げて一眼レフを持った四十歳くらいの男性が近づいてきた。

「すみません、フレア・バーテンダーのエイキさんとナナさんですね」
「はい」

 永輝が立ち上がり、菜々も彼の後ろから男性の顔を見た。銀縁眼鏡をかけた人当りのよさそうな顔の男性が、キビキビとした口調で言う。
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