シンデレラに恋のカクテル・マジック
 永輝を見つめる菜々の瞳に、じわじわと熱いものが込み上げてくる。

「断ったよ」
「じゃあ、誰ですか……?」

 気になって訊いてしまったものの、すぐに後悔した。

「いえ、いいんです。立ち入ったことを訊いてごめんなさい。永輝さんとその方がうまくいくよう祈ってます」
「祈らなくていいよ」

 永輝に言われて、菜々は永輝を見上げた。

「そ、そうですよね。私なんかが祈らなくても……永輝さんなら……」

(本気になった永輝さんの魅力に抗(あらが)える人なんていない。こんなにステキな人、ほかにいないもの……)

 そう思ったとたん、ついに菜々の目から涙があふれ出した。あわててブラウスの袖で涙を拭う。

「ご、ごめんなさ……っ」

 永輝が右手を伸ばして菜々の顎をすくい上げた。

「いいかげん気づいてよ」
「え?」

 菜々のにじんだ視界の中、永輝が苦笑を浮かべる。

「穂乃花と別れてから、軽い付き合いしかしてこなかった俺のために、菜々ちゃんは泣いてくれた。そのとき気づいたんだ。体だけの関係を誰とどれだけ重ねても、心を伴わない限り、過去の恋の傷は癒えないんだって。フレアに打ち込むみたいに、もう一度、恋にも本気になってみようって思った」
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