シンデレラに恋のカクテル・マジック
「おはようございます、菜々様」
「おはようございます。あの、おじい様は……?」
「良介様は大切な用があるとおっしゃって、書斎で秘書と打ち合わせ中です」
「そうですか。もちろん朝食は済まされましたよね……?」

 菜々の問いかけに吉村が表情一つ変えずに答える。

「はい、毎朝七時にとられます」
「私が起きてこなくて、さぞお怒りでしたでしょうね?」
「いえ、それが……疲れているのだろうから起こさなくて構わない、とおっしゃられました」

 それは意外だ。拍子抜けする菜々に、吉村が続ける。

「菜々様はどうなさいますか? 朝食をゲストルームにお運びすることもできますが」
「じゃあ、そうしていただけますか?」
「かしこまりました」

 菜々はゲストルームに戻ろうと歩き出したが、ダイニングの出口で足を止めて吉村を振り返った。

「和倉さんは来ました?」
「はい。和倉様も書斎にいらっしゃいます」
「そうですか」

 昨晩、プロポーズの返事を聞かせてほしいと言っていたから、後で返事を求められるかもしれない。待ってほしいと言うべきか、断るべきか。
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