シンデレラに恋のカクテル・マジック
(和倉さんは昨日、おじい様の許可を取ったって言ってた……。断るなんて選択肢、私にあるんだろうか……)

 知らないところで周囲が固められ、菜々の人生が決められていく。そんな状況に陥っている気がして、背筋が寒くなってきた。菜々は小さく身震いすると、あわててゲストルームに戻った。

 やがて運ばれてきた朝食は、パンの盛り合わせに、カット・フルーツ、スクランブルエッグにハム……といった高級ホテルの朝食のようなものだった。

(これ、全部食べないといけないのかな?)

 ついつい貧乏性が出て、残すのはもったいない、お持ち帰りしようか、などと考えて苦笑した。

(どこに持って帰るつもりなの)

 それでも、残すのは気が引けて、食欲がないながらもできるだけたくさん食べた。それでも残してしまったパンやウィンナーを見てため息をつく。

(これ、捨てたりしないよね……?)

 カフェオレを飲んで時間をつぶし、十時少し前になってから予備校の電話番号にかけた。事務長につないでもらって、今日も休ませてほしいとお願いすると、事務長の心配そうな声が返ってくる。

「おじいさん、相当悪いみたいだね」
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