ひねくれ作家様の偏愛
「海東くんみたいにカッコイイ男の子と手をつなぐなら、もっと若くて美人でないと釣り合わないよ」


今日も、彼の言うところのなんちゃってスーツスタイルの私。
スラックスとストライプのシャツ。黒のくたびれたバレエシューズ。
ショートの髪は朝ワックスで流れをつけただけ。メイクだって直していない。


「そんなの関係ないですよ。人が見たら、きっと俺と桜庭さんは恋人同士に見えます」


「いやいや、まさか」


「見えます、絶対」


海東くんは無表情で言い切り、そこからは黙って歩き出す。
レインボープロムナードの入り口はすぐそこ。

海を足元に、レインボーブリッジの遊歩道を渡る。
緊張感のある高さだ。

散歩する人やランナーの姿を見かけ驚く。
遊歩道の存在自体、今日まで知らなかった。
海東くんは私の手を握り、どんどん歩く。

空はやや雲が広がり始め、海は凪いでいた。
梅雨真っ只中だけど、歩くと汗ばむ気温だ。夏は確実に近付いている。

水上バスが白い波をたてて、真下を通って行った。
右手前方、海の向こうにテレビ局の特徴的な建物と目的の観覧車が見える。
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