ひねくれ作家様の偏愛
パレットタウンに入り、観覧車乗り場のデッキにたどり着くと、太陽はすでに雲の後ろに隠れてしまっていた。
乗るのかと財布を取り出した私を海東くんが押しとどめた。


「いいんです」


「乗らないの?」


「ちょっと、見てみたかっただけですから」


そう言って天を見上げた海東くんは、もしかすると観覧車に乗ったことがないのかもしれない。

その横顔はひどく孤独に見えた。

彼にとって世界はどんな色だろう。
一度栄華を極めた者に、今の境遇はどれほど冷たく寒々しいものだろう。

他者と交われない寂しさや、寄る辺のない心細さ。
彼のような男でもそんな気持ちを覚えるのだろうか。

いや、彼が私に執着する理由はきっとそこにある。

無償の愛を彼の作品にそそいでいる私を、海東くんは手放したくないのだ。
彼の欠けたグラスのような満ち足りない心は、私の歪んだ畏敬の念を欲し続けている。

海東くんが望むなら、私はいくらだってそそぎたい。
だけど、きっと今回がラストチャンス。
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