ひねくれ作家様の偏愛
「きみが望む限り、私はきみのもの」


「……桜庭さんッ」


海東くんの抱擁がきつくなる。
我慢できないというように私の身体をたどりだす指先を心地よく感じながら、私は目を閉じた。


創り手である彼にとって、今日は一番つらい日だ。
暗い底に行き着いたような気分だろう。
だから、私にできることはなんでもする。
それは、出会った頃から変わっていない。

彼がもう一度羽ばたけるまで、私は彼を支える。
それが私の責任。彼に書かせ続ける義務。

見事羽ばたいた時、海東くんはきっと私との関係を恥じるだろう。
自分には不似合いな地味な年上担当者と、執心から関係を結んでしまったことを後悔するだろう。
夢から覚めたみたいに、恋の勘違いに気付くだろう。

その日まで私は、
恋人面して彼を支える。

そうしよう。
だから、私からは言わない。

大好きだって。
愛してるって。


「智くん……、名前で呼んでいい?」


荒い吐息を交わしながら、私は彼に言った。







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