ひねくれ作家様の偏愛
反論したそうな海東くんに背を向け、先だって歩きだす。


「ちょっと、お店知らないでしょう」


海東くんが後ろから私の右手をつかまえる。
そのまま、ぐいっと引き寄せられ、彼の腕に身体が密着する。

俄然、慌てだす私を尻目に、海東くんは予約してくれたらしいお店に私を引っ張っていくのだ。
当然のごとく、右手は捉えられたままだった。


昼食はスペインバルのランチだった。
席はとってあるものの、ランチコースは自分で選べる。
価格もお手ごろだし、周囲は同じくデートのカップルや女の子同士のグループが多く、なんだか安心感。

デーと初心者の私も気負わず入れるところをセレクトしてくれたみたいだ。
有名シェフのフレンチなんかに連れて行かれた日にゃ、カトラリーぜんぶ落っことす勢いでした。
海東先生、ナイスセレクトです。

向かい合って食事するのも何度目だろう。
以前はこんな関係、考えられなかった。


こうして女子の多いお店なんかに入ると顕著にわかる。
女の子は、一度は海東くんの顔を見る。

『わ、イケメン』

『芸能人?』

そんなささやきだって聞こえてくる。
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