ひねくれ作家様の偏愛
青春群像、学園ファンタジーを描いた『アフター・ダーク』の原作者としては意外だった。
もっと、静かで暗そうな子が出てくると思ったから。


『ライナーワークさんにはお世話になってますけどね』


語る言葉も口調も理知を含み、年齢とは不相応。

だけど、すごく惹きつけられた。
私がファンだからっていうのもあるだろうけど。

私は『アフター・ダーク』の大ファンであることを正直に告げ、仕事を依頼した。
忙しいことは重々承知しているが、是非にと。

情熱的に語る私をよそに、海東くんは冷静そのもの。
いや、むしろ不遜な態度だった。


『お受けできませんよ』


海東くんはあっさりとした声音で、断ってきた。
予想していた答えだったので、私は用意しておいた文句を口にする。


『このノベライズが成功したら、ゲームシナリオとは関係ないところで次回作を執筆していただきたく思っています。作家としての未来をご用意できます。道が増えるのは、海東先生にとってもプラスになると思いますよ』


海東くんは冷めた瞳で答えた。

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