ひねくれ作家様の偏愛
『プラスになるかは俺が決めることです。作家なんてやりたいときにやりますから、ほっといてください』


あまりに倣岸な返しに、驚いたのを覚えている。

自分が望めば、仕事も未来も手に入ると言わんばかりの若者。
これは、一筋縄ではいかない。

だけど、私も諦めたくなかった。


1ヶ月以上かけて、彼の部屋に通った。
差し入れを持ち込み、使い走りも引き受け、嫌味も笑顔で返した。


『桜庭さんって暇人なんですね』

『空気読めないって言われるでしょ』

『クラスの隅にいるオタクグループに所属してたクチ?』

『女としてどうなんですか、その下手なメイク』

『いいから、黙るか消えるかしてください』


海東くんは言いたい放題だった。傲慢だった。
私を踏みつけることに何のためらいもなく、平気で暴言を吐き、平気で私を下僕のように扱った。
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