桜並木の下で
それからまた、時は流れ…

枯れる事のない、光の庭と並木道の桜は咲きつづけ、ヒラヒラと花びらが舞っていた。

にぎやかな見送り人による送迎会が行われ、渡り人が扉の中に消えて行くと、見送り人達は光の庭へと戻って行った。

が、一人残っている人物に気づくと、番人は声をかけた。

「こんにちは…」

「こんにちは番人さん、久しぶり〜」

「お久しぶりです、お戻りになっていたんですね…今は千夏さんとお呼びすれば、よろしいでしょうか?」

番人はファイルを開いて検索をすると、彼女の情報を確認した。

「うん」

千夏と呼ばれた女性は、ショートヘアーの可愛いらしい感じの女性で、二十歳ぐらいの姿をしている…

「あちらは、楽しかったですか?」

「うん、楽しかったよ〜番人さんの顔にそっくりのアイドルがいて、笑っちゃった」

千夏は番人の前に来ると、笑顔で番人の白い仮面を見た。

「そうですか…少しお戻りが早いようですが…」

番人は資料を見ながら、天命をまっとうしていない事に気づいて、たずねた。

「うん…あ、でも自殺して来たわけじゃないよ?そうだ、番人さんのスープ情報のおかげで、光の庭と番人さんの事を少しだけ、覚えていれたよ?」

「そうですか…」

「番人さん、光の庭で話さない?」

「いいですよ…」

「じゃあ、腕を組んでもいい?」

「…かまいませんが」

「やった〜」

千夏は番人の腕に自分の腕をからめると、桜の舞い散る道の上を歩き始めた。

「うふふ…実は番人さんに早く会いたくて、予定を早めて帰って来ちゃったんだ〜」

千夏は楽しそうに、そう言うと番人の顔を見上げた。

「…そうですか」

「今、ちょっと照れたでしょ?番人さん」

「いえ、私にはそのような感情は、ありませんので…」

番人がそう答えると、千夏はぴたりと口を閉じてしまい…二人は光の庭まで黙って歩いた。



「わ〜」

光の庭に着くと、ずっと黙っていた千夏が口を開いた。

桜の樹々の間を抜けて、庭の中央にある噴水に着くと、二人はベンチに腰かけた。
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