桜並木の下で
「やっぱり、ここはいつ来てもキレイね〜」

千夏は嬉しそうに噴水に近づくと、水しぶきの周りに舞う青い蝶々を眺めた後、ふり返って番人を見た。

「番人さん、久しぶりに番人さんの顔が見たいな〜」

「かまいませんが…」

番人は言われるままに仮面を取ると、千夏を見た。

「…これでよろしいですか?」

「うん、やっぱり桜井君にそっくりね〜うふふ、やっぱり私、番人さんの事が好きみたい…」

千夏は番人の前に来ると、その顔をじっと見つめた。

「そうですか…ですが、私があなたを好きになる事は、永遠にないですよ?」

番人は特に何も感じる事なく、淡々と答えた。

「いいよそれでも、ずっとこっちにいるから…こうやって番人さんに会えれば、けっこー幸せだから」

「それは許されない事です…ある程度は自由意思ですが、いずれ、あちらに送られてしまいますよ…」

「ふ〜ん…ねぇ、番人さん…どうして人間は、転生輪廻しなきゃいけないの?」

「それは、汚れた魂を浄化するためだと聞いていますが…」

「でもそれって、変じゃない?私達の魂って、いつ汚れちゃったのかな?」

「…さぁ」

「でしょう?分からないよね?」

千夏は番人の隣に腰かけると、さらにつづけた。

「私、全部の記憶を忘れなかったおかげで、向こうで『光の庭』ってゆ〜サークルを作ったの」

「そうですか…」

「んでね、けっこーたくさんの人が『光の庭』の事を覚えていて…いろんな話をしていくうちに、ある疑問が浮かんできたの」

「…それは、いったい何ですか?」

少し興味をひかれて、番人はたずねた。

「人間の存在意義って、何だと思う?番人さん」

「それは…分かりませんね」

あっさり番人が答えると、千夏は嬉しそうに番人を見た。

「そうでしょう?で、私は思いついたの」

「?」

「私と番人さんの大きな違いって、何?」

「…感情があるか、ないか…ですか?」

「あたり!って事は、私達人間が存在させられている理由って、そこにしかないと思わない?」

「?」
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