艶楼の籠
これから、冠宴の儀を行うため親戚一同が集まり、お祝いをしてくれるらしい。

しかし、呉服屋の後継ぎが私であるという事を知らしめる為の御披露目会といった部分が大きいだろう。

父母は、婿を探してくれと親戚一同に言い回るのだろう。

「はぁ…気が重い。」

せっかく、20歳になったというのに全く自由に暮らせる気がしない。

後継ぎとなれば、結婚をして家庭を持ち、夫と2人で経営した方が将来的にはいいとは思う…。

でも…自分の力で何かを成し遂げてみたい。


仕事も…恋愛も…。


綺麗な着物に身を包んだことで、更に気は重くなるばかり。
この日の為に用意したという豪華な着物。


「はぁ…。」


無意識に出てしまった溜息。


「雅。溜息とは…今日は祝いの席なのだからな。」


父が静かな声で私に話した。それは、偽りの笑顔でもいいから明るく振る舞えと言っているように聞こえた。


「もちろんです。緊張してしまって…。」


「雅は、本当に美しい。大丈夫だよ。」


宥めるように、優しく放つ父の言葉。
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