君のために歌う歌
高橋は紺の浴衣を着ていた。
 
 


いつもだったら切るくらいの長さに伸びたスポーツ刈りは、郷愛に言われたからか本当に伸ばしているようだった。




浴衣姿の高橋は、いつもよりも男らしく見えた。




「高橋、私の分のチョコバナナは?」





高橋のくせにかっこいいなんて生意気だぞ、と思いながら宙子は悪態をついた。




「お前のはねぇよ。郷愛には浴衣借りたからお礼なの。」



そうゆうこった、と郷愛はチョコバナナをもぐもぐしながらピースマークを出して言った。



「え、浴衣、郷愛が貸したの?」



「うん、イケメンと並ぶのに普通の高橋じゃ勝ち目が無さすぎると思って。」



「否めねぇ。助かったわ。」



「いや高橋そこは少しは否もうよ!!」



「まぁ、浴衣高橋も少し無駄になる結果になったけどねぇ……」



郷愛が宙子をわざと睨めつける。



宙子は苦笑いをした。



「無駄とはなんだ無駄とは!今日は3人で大いに祭を楽しもうじゃないか!」



「おっさんかよ。」



宙子は笑ってツッコミを入れたが、正直、いつもどおりにしてくれる高橋に救われる。
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