君のために歌う歌


三人は、高橋の言った通り大いに楽しんだ。


チョコバナナ、数字合わせ、射的、焼きそば、たこ焼き、綿あめ、ヨーヨー釣り…



高校生とは思えないほどはしゃい
だ。



宙子は、祭りで友達とこんなにはしゃいだのは初めてだった。






辺りは暗くなりはじめ、並んで下がっている提灯に灯りが灯る。



人出も増え、カップルも増えてきた。



歩き疲れた3人は、ベンチに腰掛けていた。



宙子がりんご飴をかじり、郷愛は先ほど見つけた亀すくいで手に入れたミドリガメを熱心に見ている。



高橋は、「ちょっと便所行ってくる」と行ってしまった。



宙子はぼーっと、道行く人々を眺めていた。


みんな楽しそうだ。


カップルは、自分がこの世で一番幸せ!と言った顔の人ばかりだ。



リア充爆発しろ!と思いながらりんご飴をかじる。



甘い飴と、みずみずしいが甘くないりんごの果肉に、宙子は現実ってこんなものだよな、と思った。



こんな人ごみで、陽翔に会える訳が無い。



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