君のために歌う歌

階段を降りていき、受付らしいところにはボブカットのちょっと冷たそうなお姉さんがいた。



まずは郷愛がチケットを渡した。



「誰を見に来ました?」


「影葉陽翔」


お姉さんは手元に素早く正の字をかいた。


「浴衣なのでドリンクはタダです。」


お姉さんはそう言うと郷愛に何かを渡した。



「ありがとうございまーす。」



郷愛はそう言ってそれを受け取ると、宙子に


(同じようにやれ)



とアイコンタクトをした。




だから宙子も、同じようにした。



影葉陽翔と言った時に見たお姉さんの手元には、他の出演者も書いてあったようだが、一番正の字が多いのは陽翔ではなかったように見えた。



郷愛がもらっていたものと同じものを宙子も受け取る。


それは、DrinkTicket と書いてあった。


郷愛はそれをピラっと宙子に見せると

「ほんとは500円だからね。浴衣さまさまだね。」

そう言ってニヤリとした。
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