君のために歌う歌
陽翔はステージ上で線を繋いだり足元の何かを踏んだりして確認をしていた。

(後で高橋に聞いたところ、線はシールド、足元のものはエフェクターというらしい。)





暗がりにいる陽翔はいつもの柔らかな表情ではなく、真面目で忙しそうだった。



宙子はジッとその様子を見ていた。



1mに満たない距離なのに、なんだか陽翔は遥か彼方にいるようだった。





スタッフと何かやりとりをし、色々な確認が済んだ陽翔は、やっと宙子を見た。



宙子は、自分が見られているようでは無いような、不思議な感覚に襲われた。



陽翔はいつもの微笑みを見せると、ステージからはけていった。



「宙子のこと見て笑ったな!」





郷愛が肘でつついてくる。


宙子はなんだかボーっとしていた。






程なくして会場は暗転した。



暗闇の中、陽翔がステージの真ん中に立ったのが分かった。

そして、
オレンジの照明をうけて、陽翔がステージに現れた。
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