君のために歌う歌
きゃあと歓声があがり、拍手が沸く。



陽翔は真っ直ぐ前を見つめていた。



後ろにいる女の子達が「かっこいいかっこいい」と小声でささやきあっている。

 

いつもより、その長い前髪が目にかかっていた。



「影葉陽翔です最後まで楽しんでいってください。」



早口にそう言うと、アコースティックギターをかき鳴らし始めた。




宙子はてっきり、陽翔は座って歌うんだと思っていた。


セミナーハウスの裏で歌っている時のように、静かな歌を、切なく優しく。



しかし今日の陽翔は立っている。



そして力の限り歌っている。
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