ごめん、好きすぎて無理。
『ふーん……じゃ、今は?』
俺の言葉に、笹本が俺の方に視線を向けた。
この完璧な顔、完璧すぎるほどの体、どこから見てもみんなが振り返り、そして羨む、そんな人なのに。
でも、心だけは、誰も見ようとはしなかったんかな…?
顔や体は見ても、心だけは、笹本の心には興味なかったんかな?
『今は……』
笹本はそれだけ言って、言葉を止めた。
『今は、何?』
俺がすかさず聞き返すと、笹本は困ったように笑った。
『不思議なことに、何故か自分の気持ちを言えて、スッキリしてる……』
そう言って、笹本は俺の顔をもう一度見つめた。
『そっか、誰か一人にでも本気でぶつかれる、そんな奴を作れよ?
そしたらお前の演じてばかりの人生も変わる、そう思うけどな』
俺の言葉に、笹本は、クスって笑った。
『……無理。
こういうことって普通、話せないじゃない?
普通に話せる、そういう人、私にはいないから……』
あ、こいつ、そういうの諦めてるんだ、何故かそう直感した。
だから、なんか困ったように、寂しそうに、悲しそうに、笹本は笑うんだな…
誰か一人でもいい、
こいつに手を差し出す、そんな存在が笹本には必要なんだ。
『じゃ、俺に話せば?
なんか分からんけど、こうやって話を聞いた縁、つーことでさ…』
俺がそう言うと、笹本は驚いた顔をして、でもすぐに微笑んだ。
その微笑みこそ、本当に“女神”に見えた、そんな瞬間だったー…