ごめん、好きすぎて無理。




いやいや、海君…。


惚れた、腫れた、とかじゃなくて!



紗奈とはもう二度と会いたくないの、俺は!







『あのなー…
 弟の彼女は弟の彼女、だろ?
 弟の彼女に心奪われるほど、俺は女に困ってなんかありません』






そう、惚れた、腫れた、なんかじゃない。


ただ、会いたくないだけ。






『……ふーん』


海はそう言って、俺の顔をまじまじと見つめる。







『……なんだよ?』



『陸ってさ、変わってるよね?
 あんなに美人な女、一目見たら心奪われるよ、普通…』




海の言葉に、海も紗奈に一目惚れした、そういうタチなのかな、と思った。






『海、お前さ、彼女に一目ぼれ?』



俺の言葉に、海は照れもせずに、



『一目ぼれで悪い?
 あんな綺麗な奴、俺、初めて会った。
 あんな奴、見てもなびかない陸の方が変わってる』


そう、言った。



海の顔を見ていれば、海がどれだけ紗奈を想ってるのかが伝わってくる。



海はすっげー紗奈のことを愛してる、それが分かる。






確かに紗奈は綺麗だ、高校の時も、今も。


いや、高校の時のあどけなさが消えて、更に美しさに磨きがかかってる。


あの頃よりも、俺が覚えている紗奈よりも、ずっとずっと綺麗だ…。






けど、紗奈には二度と会わない、そう思っていたし、再会した時は海の彼女だったし…








『…そうかもな。
 けど、弟がそんなにマジな相手なんだったら…』





『陸、紗奈のこと、絶対に俺から取らないでね』




海は俺の言葉を遮り、そして衝撃的な一言を言う。



俺は一瞬、自分の耳を疑った。











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