ごめん、好きすぎて無理。
『海君、私が好きなのは海君、だよ?』
紗奈がそう答えて当然。
いや、むしろこの流れで紗奈がそう言うのは当たり前…
でも、紗奈が海を好きだと、海に微笑むと、俺の心はチクリと痛んだ。
『知ってるよ、ただ紗奈の浮気防止、だよ』
そう言って、海は微笑んだ。
でも、俺は朝みたいに海のその微笑みに身震いが起きそうになる。
『浮気防止?』
『そうだよ?
みんな俺が好きになった人は兄貴を選ぶから。
紗奈は俺にとって一番大切な人だから、紗奈を失いたくない』
どこまで海は紗奈のことを想っているんだろうか…。
どれだけ紗奈を愛してる、というのだろう…
『じゃ、私がお兄さんを好きになっちゃった、そう言ったら?』
紗奈のその言葉に、俺の頭は真っ白になる。
冷や汗が背中をゆっくりと伝っていく、それがとても冷たいものに感じて。
俺は海の返事を待った。
『もし、紗奈が陸を好きだって言ったら…
兄貴のこと、殺しちゃうかも。
紗奈から永遠に陸を奪う、かもなー』
海のその言葉、紗奈の言葉は出なかった。
いや、出せなかった、そう言った方が正しい。
何故なら笑ってるはずの海のその顔はとても怖いものだったから。
『…海、冗談やめろよ?
彼女、黙っちゃったじゃん…。
ほら結婚前提の付き合いなんだろ?
そんな話してないで、ほら、飲み会始めよーぜ?な?』
俺は紗奈が盛ってくれた皿を持ち上げ、二人にそう話した。
海も俺の言葉にニコッと笑って、“手伝うよ”、そう言って別の皿を持つ。
チラッと紗奈の顔を見ると、紗奈はその場でクスッと笑ったー…