ごめん、好きすぎて無理。




『海に罪悪感は、ないの?』





『ないよ。
 最低だね、自分でもそう思うよ…

 でも、ごめん…』




紗奈はそう言って、俺の手に触れる。


そして俺の目を見つめて、少し苦しそうな顔で、それでも口を開いた。






『陸がいる、陸に触れられる、その喜びしかない、私の心の中…。

 私の心の中、陸しかいない…』









……紗奈は海の彼女。


紗奈は海の彼女、そう自分に言い聞かせてないと、紗奈のその目に、紗奈のその言葉に俺の心の中に紗奈が入ってきてしまいそうだったー…








『俺…そんなにお前に思ってもらえるような、そんな奴じゃない…』





『陸……』



触れてる手は、紗奈のその呼びかけと共に、まるで恋人のように繋がった。







『陸、これだけは覚えててね?
 私は陸のことが好き、それだけは今もこの先も、ずっと変わらない』







海、紗奈のこの想いは、俺には止められないかもしれない…




海の幸せを願いたい、でも紗奈のこの強い想いを俺は邪険に扱えない…







『陸、ごめんね…?
 好きになって、会いに来て、困らせて…』







…そう、紗奈の想いは、紗奈の行動には迷惑してるー…


でも、紗奈がくれる好きという言葉は、紗奈の想いは、俺にとって…









『ごめんね…陸』






紗奈、俺、あの日、お前の手を離さなければ良かったのかな…




そうしたら、紗奈が海を利用することなんてなかった。


そうしたら、海は紗奈に裏切られることなんてなかった。







『紗奈、紗奈と付き合ってた時、俺は紗奈のこと、本気だった。
 もし海の彼女としての再会じゃなければ、俺はお前をもう一度好きになれてたかもな…。

 でも、紗奈が何回好きだと言っても、紗奈が何度俺に触れても、それでも俺はお前に振り向かない…

 だから、もう俺なんて忘れてさ、海と向き合えよ?』






そうしたら、俺は紗奈にこんな風に言わなくて済んだかもしれないー…







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