ごめん、好きすぎて無理。
『私が眠るまで、手、繋いでてくれる?』
『……最後のお願いって、それ?』
紗奈のことだから、もっと無理なお願いをしてくる、そう思っていたのに。
紗奈の可愛らしいお願いに、俺はフッて笑って、紗奈に手を差し出す。
『陸、ありがとう…』
紗奈はそう言って、差し出された手に自分の手を絡める。
『陸、少し寝よう…?
なんだか疲れちゃった…』
子どもみたいに甘えた声でそういう紗奈は、本当に疲れている、いや寝むそうでもう片方の指で目を擦っている。
『……………分かった』
俺はそう返事をして、目を閉じる。
目をつぶっていても紗奈が隣にいる、俺の全身がそれを感じている。
耳が紗奈の寝息を、鼻が紗奈が纏っている香りを、手が紗奈の温もりをー…
『……って、早くね?』
俺は隣でもう寝息を立てている紗奈の顔を見つめ、そう呟く。
『……子どもみてー…
おやすみ三秒かよ…』
俺はそんな紗奈の寝顔に、つい口角が上がる。
『………紗奈、幸せになれよ…』
隣から返事はなく、完全に紗奈が寝ていることを確信した。
『………誰よりも一番に幸せになれ…。
俺の一番大事だった、紗奈……』