ごめん、好きすぎて無理。





『君はお付き合いしてる人でもいるのか?』




紗奈のお父さんは俺が背後からついてきてるのを感じ取っていたのか、振り向きもしないままそう問いかけてきた。







『……いません』





『………そうか』






紗奈のお父さんと俺の会話はそこで途切れる。




そもそもこんな風に話してもらえる立場でもない俺が、紗奈のお父さんの後をつけている、それもまたおかしな話で。









『………紗奈はようやく君を乗り越えたみたいだ』




そのポツリと言った言葉に、俺の心臓が鋭利なもので一突きされた感じがして、チクチクというよりヒリヒリと痛むようだった。








『紗奈はずっと、君を想っていたみたいだからね…。
 私や妻には到底信じられなかったが、それでも紗奈は本当に君を愛していたんだと思う。


 それだけはあの子といると、すごく感じてね…。
 そんな紗奈を見ていると、私が君と紗奈を別れさせたこと、間違っていたかもしれない……何度もそう思った、思ってしまったよ…。


 だからこそ、紗奈の結婚が決まって…私は本当に嬉しいんだ』






あの全てを失った紗奈と毎日顔を合わせていたお父さん、だからこそ、そのお父さんの娘を思いやる気持ちに、胸の奥が痛くなる。









『……君も早く………』









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