ごめん、好きすぎて無理。
『……そうか。
君に忘れていないと答えられるのも、忘れてると答えられるのもどう返事をしていいか困るよ。
でも、娘は結婚が決まってね、親としては喜びの想いでいっぱいだよ』
『………知ってます』
『娘に会ったのか?
娘に聞いたのか?』
『紗奈さんが結婚を考えている相手、俺の知り合いだったので、そちらの方から聞きました…』
俺の言葉に、紗奈のお父さんも少し表情から怒り、憎しみが抜けた気がする。
『……今、その方が娘に会いにきてくれてるみたいだな。
それで、君は?』
『………俺の知り合いをこちらの病院に送ってきて…
紗奈さんには会いませんから…そいつに先に帰ることを伝えて帰ります…』
『俺はね、君のことが大嫌いだ。
娘に傷をつけて、簡単に娘から離れて……
でも、君が娘から離れてくれたこと、それだけは感謝してる』
そう言って、紗奈のお父さんは体の向きを今、来た方に戻して歩いていく。
海に、先に帰ること、それを伝える、俺はそんな名目をつけて、お父さんの後を数歩遅れてついていった。