大人の恋はナチュラルがいい。
「いいの?ヒヨコさんの部屋に行っちゃって、ご飯まで作ってもらっちゃって?」
「太一くんさえ良ければ」
「いい!って言うか、うわー嬉しい。ヒヨコさんの手料理食べられるなんて」
今度は少女のように両手で口元を覆いながら、大げさではないかと思うくらい太一くんは喜びを見せ付ける。
「手料理って。いつもランチボックス食べてるじゃない、あれだってスタッフも手伝うけど大体私の手料理だよ」
「でも今日は俺だけのために作ってくれるんでしょ?」
ああ。なるほど、そうきたか。胸を確実に疼かせる彼の甘い返しに、今回は納得までしてしまった。料理する事が一種のルーチンワークでもある私は“彼氏のために作る”と云う特別感を忘れていたのだ。そうか、私は今から彼のためだけに料理を作るのか。そう考えると俄然やる気も湧いてくる。
「よーし、じゃあ今日は太一くんのために腕を奮っちゃおう」
入れなかった店に背を向けてガッツポーズをしてみせると、同じように踵を返した太一くんが肩を竦めて笑った。「すげー楽しみ」と呟かれた声に応えるように、私は握りしめていた拳にぎゅっと力を籠めた。
***
深夜までやっている大型スーパーに立ち寄り必要分だけ食材を買い込む。「食べられない物ある?リクエストしたいメニューは?」などと聞きながら頭の中で献立を立てつつポイポイと籠に食材を入れていくと、どうやら太一くんの目にはそれが手際良く見えたようでやたらと感心されてしまった。レジで会計をすると、財布を出しかけた私を彼の手がやんわりと止める。「料理してもらうお礼」と言ってスマートに自分の財布を出す辺り、年下だけどやっぱり男らしいななんて今度は私の方が感心してしまった。