赤いエスプレッソをのせて
彼がシスコンじゃないってことは知っている。

私だって、妹のことであれこれあるけど、シスコンじゃないからだ。

彼はただ、自分のことが許せないのよね。

お父さんやお母さん、そしてお姉さんを見殺しにしたことが。

そしてそれが、死んでしまった姉を大切に思うという形にすり替わっているんだ。

――誰だって、経験があるかもしれない。

例えば、肉親の誰かが死んでしまって初めて、もっと孝行していればよかったという、後悔が――

彼のも、それと同じなのだ。

「僕はやり直しが利くのかな」

私を胸に抱き止めて、とてもとても真摯な声で、彼は囁く。

「『姉さん』が『美代』へ生まれ変わってくれたことで、僕は、やり直しが利くのかな。今度こそ姉さんを殺されないですむのかな。僕が守りきれるのかな」

ふ、ふふふふ……

自分でもなんてお人好しで、なんてずる賢い女なんだろうと思う。

あれほど、だれかの代用品はごめんだったのに、今その代用品を演じているんだ。

それも、非現実的なうそまでついて。
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