赤いエスプレッソをのせて
鏡の妹がどんな反応を返すかまでは見届けず、ぷいと目を外して、また角を折れる。

どんなに急に動いても、肩上にいる六歳の少女が置いていかれることはない。

彼女は私の一部なのだから。

大通りへ戻ると、ひとの数がどっと増える。当然そこに溢れる音も。

「静かにしてんのよ」

なんてことを妹に言いつつ、歩道を進む。

ふと見上げれば、花びらが早くもほとんど散ってしまっていた桜が、今、青い空に緑の色彩を広げて、ちりばめて、披露していた。

梢からチラホラと昼前の日差しが注いできていて、それがまたなかなか綺麗だ。

この並木通りを過ぎれば、山下病院はすぐそこだ。

山下病院は大まかに、外科・内科――の二つは小児科も兼任で――精神科・産婦人科の四棟に分かれている。

図で言えば、まあ、四枚羽根の風車ってところだろうか。

中央の軸のところがちょうど、受付と会計、薬局だ。

そして肝心の精神科は、四枚羽根の右上に当たるというわけ。

そして数分と歩かないうちに、木々の枝葉の向こう、白くて、なんとなくキラキラしている気がする建物が、ヒョイとその頭を覗かせた。
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