赤いエスプレッソをのせて
おっと話を戻さないと。

それでまあ、今日行くのも『それ関係』で私が通っているところなのよね。

山下病院といって、白が基調の内装は清潔感だけじゃなくて、どこか安らぎも与えてくれる。

近所の病院と比べれば少し遠いが、仲代多美という、長い髪と楕円メガネが世界一似合う美人の先生がきちんと担当してくれるから、私はあそこが好きだった。

人通りの多い道から、横道にそれる。

ほんとは素直に通りを進んだほうが早いけど、ちょっと変則的に目的地を目指すのが私流だ。

それに、肩の妹と話すのに、ひと気があるところは望ましくないのだ。

「まったく、妹思いのお姉ちゃんよね、私って」

カーブミラーに首を向けながら言う。

「死んでるアンタにこーんなに気ぃ使ってんだから、感謝してほしいわ」
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