赤いエスプレッソをのせて
「千代がいる。ブロックで遊んでるよ」

「そうですか……ほかになにか見えますか?」

なにか? ……なにか……うーん……。

特に、『普段』と変わりあるものは見当たらない。

居間に広がってる遊びっぱなしのおもちゃも、台所のテーブルの上にある買い物袋も、なんも変わっちゃっない。

いつもと同じだ。

間違い探しなんて難しいよ。私は、首を横に振った。

「なんにもないよ」

すると、だれかの声は、しばらく間を開けた。

……さっきから話しかけてきてるの、誰の声だっけ? 聞いたことがあるような、ないような。

「――どうやら妹さん、まだ生きているみたいですねぇ。……もう少し先にいきましょうか」

え、なにを。どこへ。

訊ねる前に、

「未来へいきます。黒井さん、アナタは、未来へ進みます。未来へ、未来へです」

だれかの声が聞こえ、千代の姿が、水面に石を投げつけたみたいにぐにょりと揺れた。

私の足が、床から離れる感覚がある……また、いつのまにか、私は息継ぎの要らない水の中を、ふわふわと流されていた。
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