赤いエスプレッソをのせて
「――ぅ、あッ!?」

そのなにかに驚いて体を起こすと、目の前に、もう、赤い水溜まりの中に倒れる妹の姿はなかった。

いつのまにか私は、実家の居間から、仲代先生の診察室へと移っている。

目の前に、彼女が深刻そうな顔をして私を覗き込んできていた。

「だっ、大丈夫ですか、黒井さん?」

青い縦筋が彼女の顔面を彩っているような気がした。

強い、太陽のように毅然とした輝きを持っている彼女の瞳に、どんよりしたものが揺らいでいる。

「だ、大丈夫です……」

答えた時初めて、私はびっしょり汗を掻いているのに気付いた。

なんで、どうして? 私、なんかしたの?

頭の中に、ついさっき見た場景が、パッと浮かんだ。

倒れている妹。私の手には、包丁。彼女は、どこに? 赤い水溜まりの中。ぐったりと。
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