赤いエスプレッソをのせて
「ぁ――……ありがとう、……ございます」

差し出されているチョコレートを受け取って、ゆっくりと身を起こした私は、座った途端崩れてしまう気がして、そっと椅子に腰掛けた。

どうしてか震えてしまっている手で包みを破り、口の中へチョコレートを放り込む。

甘い味と一緒に、なぜかしょっぱさが口に広がった。

「どうぞ。――これで、拭いてください」

と、仲代先生がティッシュペーパーを二、三枚取って渡してきた。

無言のまま受け取って、口元を拭こうとすると、彼女はその前に、自分の頬を人差し指で縦になぞってみせた。

わけがわからないジェスチャーに一瞬固まって、首を捻ると、彼女はもう一度、頬を縦にツーとなぞる。

私は、それを真似して――

「ぁ……ぁ……ぇっ……?」

ほっぺたが、信じられないほど濡れているのに気付いた。

涙が、止めどなく溢れかえって、流れて、こぼれていた。

さっきしょっぱかったのは、これだ。

顎や喉にまで伝わって、今や、ジーンズには雨が降ったみたいな斑点ができていた。
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