赤いエスプレッソをのせて
「なんでまた……いまさら?」

訊くと、

「そうですね……たしかにいまさら……いまさらなんですが……そうですね、アナタに出逢ったからでしょうか?」

「はあ?」

なんなのよ、それ。どうして私とあったから、死にたくなるの?

千代のため、もしくは自分のため、山久を殺してやろうかとも思った私のマグマが、ジュッと水に触れたように、急に冷えた。

盗み見ていた凶器から、あっという間に目をはずす。

冗談抜かさないでほしいもんだわ。なんで私が、人のためにそんなこと。

第一、彼には私が妹の幻が見えるとか、幼い時に妹を殺したとか、そんな話はしちゃいない。

なにかしら共感されたり、同情されたり、興味を持たれる理由はないはず。

……なのにどうして、そういうことをさも当然のように言うんだろう。

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