赤いエスプレッソをのせて
友人が言うには私の部屋はとても妙なものに映るらしいけど、こんなにたくさんの鏡があるのもみんな、妹と話しやすくするためのものだ。

千代がじかに見えないというわけじゃないけど、わざわざ自分の肩辺りまで首を捻るのは面倒くさいのよね。

食卓の正面の鏡――ベッドと洋服タンスの間にあるやつに、千代が寄りかかっているのが映る。

唇は動かさずとも、その目がまた、こう言うのだ。

――よくも殺したな――
――よくも殺したな――
――よくも殺したな――

私はもう、

「アンタもいい加減、しつこいわね」

ただ小さく呟き返すことしかできない。

「何度も、謝ってるじゃないの……」

彼女を私の肩に初めて見たのは、九歳の時。

ちょうど妹の一回忌からだった。

それまではまったくなにもなかったのに。
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