赤いエスプレッソをのせて
「それともなに? 私に死んで詫びろとでも言いたいの?」

なんとなくだけど、思っている、考えていることがある。

もしかしたら千代は、さびしいんじゃないだろうか。

本当だったら高校生になっていて、謳歌するはずだった人生がなくなってしまって。

そのことが……もしくは、たったひとりでどこかへ行くのが怖くて、私のところにいるんじゃないだろうか。

千代の口癖は知っている。『美代ネエ』だ。

私が『美代お姉ちゃん』と呼ばせて失敗した結果、千代は私をそう呼ぶようになった。

それからずっと、嬉しい時も悲しい時も、なんでもかんでも、美代ネエだった。

彼女はだれよりもたぶん、私を慕っていたんだ。

「そんなの無理に決まってんじゃないの……もうこんなに生きちゃったんだし、いまさらアンタの追っかけで死ぬなんてご免だわ」
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