私の仕事と結婚
「なかなかここまでは足を延ばすのは大変だもの。嬉しいわ。」

二人であちこちの展示場に入り、資料をもらっていく。

時には夫婦や結婚間近のカップルに見られたりしたが、典弘はそれを否定せず、その状況での質問をいろいろしていく。

典弘からどんな言葉が出るのかドキドキしながら、私もそれに合わせた受け応えをしていく。

「このユニットバス…。」

こないだ典弘に照会したタイプのものだ。

「これは新商品なんですが、なかなかの人気なんですよ。」

営業マンはそう説明してくれる。

「まだそんなに出回っていませんが、注文はかなり入って来てるみたいですよ。」

「広い感じと落ち着いた色合いが良いですね。」

私は凄く得した気分になって、じろじろと見て回る。

「うちの奥さん、お風呂にいろいろこだわりがあるみたいなんですよ。」

同じくじろじろ見ていた典弘は、さらに夢中になっている私を見て笑う。

はっと我に返った私は、

「お時間取らせてすいません。」

と営業マンに謝って、その展示場を後にした。
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