小さな恋物語



「昨日の藍は一気に災いが訪れたな」

「一番ショックなのはヒール折れたことだよ」


データが飛んだ事は大騒ぎになったから人づてに雄也の耳に入り、私のパンプスのヒールが折れたのは雄也の先輩がたまたま目撃していたらしい。


「…あいつの事は?」

「うん。まあ、そこそこ腹立ったしショックだったけど。とっくに終わってる事だから」

「よく耐えたよな」


そう言って雄也は私の頭をポンと撫でた。


あいつというのは私が先月別れた元カレ。同じく同期で、三年付き合っていたんだけど。お互いに忙しい事もあって段々と会う時間も減り。半年前に納得の上で円満に別れた、と思っていたのは私だけだった。
実は一年前からうちの受付の子と付き合っていたらしく、昨日結婚したのだ。デキ婚。
私達が付き合っていたのを知っていた人はごくわずかで、課の人にはバレていなかったから助かったけど。昨日その話を聞いた時は本当に腸が煮えくり返りそうだった。
何も気づかなった自分に対して、本当に腹が立って。
< 55 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop