小さな恋物語
「あーあ。雄也に慰められる日が来るとは」
「どういう意味だよ」
いつも付かず離れずの距離にいて、お互いに恋人がいても時々は飲みに行ったり、仕事の愚痴をこぼしたり。励まし合ってきた。
「…藍、そういう顔、俺以外に見せるなよ」
「えっ?」
急に真面目な顔をして言うから。胸がざわつく。
「ていうかこんな姿、誰にも見せられないよ。最悪じゃん。頭ボサボサでスッピンで、部屋着だし。今、雄也に見られてるのも嫌だもん」
「俺は好きだけどね。だってこんなの俺もだけど、本当に親密な相手にしか見せないじゃん」
親密…。雄也には強引に引っ張り出されたからこんな姿なんだけど。
「まだ寝ぼけてんの?俺、好きだよ。好きでもない相手にここまでしないから」
ぐいっと腕を引っ張られて抱きしめられた。がっしりした体と、少し汗んばんでいる肌。雄也の手が私の頭をゆっくり撫でる。
「返事は?」