溺愛オフィス
慣れた手つきで操作して、携帯を耳に当てる。
「あ、KAORI? あなた今どこにいるの?」
良かった、KAORIさんとは連絡がついた。
あとはトラブルに巻き込まれてなければ……と、心配しながら様子を伺っていると。
「何を急に。無理に決まってるでしょう。いいから早く戻ってください」
呆れたような口調で言って、松岡さんは通話を終わらせた。
そして、私を見ながら困ったように肩をすくめる。
「一度ここに来てたみたいだけど、今は近くのカフェにいるそうです」
「一度いらっしゃってたんですか?」
その事実に、私は少し目を丸くした。
誰からもそんな話を聞いていない。
私の疑問に松岡さんは首を縦に振る。
「少し機嫌が悪そうでしたけど、五分くらいで着くようです」
「わかりました」
もしかして、一度来たけど時間があるからと中には入らなかった……のかな?
とにかく、すぐに着くならこのままここで待ちましょうという話になり、私は松岡さんと今日の撮影の話なんかをしながらKAORIさんの到着を待った。