溺愛オフィス
元から何かが原因でKAORIさんは機嫌が悪かった。
けれど、一度おさまりかけたそれを私がまた悪くしてしまった。
なら、私が謝って、あとはKAORIさんに気持ちよく仕事をしてもらえれば、リアライズとしてはOKなはず。
桜庭さんも、KAORIさんには色々と思うところはあるだろうけど。
私も、こうしてフォローしてもらえて凄く嬉しいけど。
とにかく、撮影することを最優先に。
桜庭さんだって、わかっているはずだ。
なのに。
「蓮井の方が大人だな」
桜庭さんのKAORIさんに対する厳しい声は止まらない。
「個人的な感情を優先して、現場の雰囲気を悪くするトップモデルとは大違いだ」
止めとばかりの言葉。
これにはさすがにKAORIさんも我慢ならなかったようで。
「帰る」
短く言って、ヒールの音を鳴らしながら階段の方へと歩いて行ってしまう。