溺愛オフィス
「でも、私がKAORIさんの機嫌を悪くしたのは確かです」
壮介君や深水さんはともかく、原因のひとつになった私までこのまま帰るわけにはいかない。
桜庭さんが説明するとしても、私は社長に頭を下げないといけないだろう。
そんな思いがあったのだけど……
「だとしても、俺が1人で説明する。人数がいても仕方ないだろ」
桜庭さんは再び、私の願いを跳ね返した。
二度、断られて、さらにもう一度押すことは憚られて。
「わかり、ました……」
仕方なく、引き下がった。
社長への謝罪は、明日私だけで改めてしよう。
心に決め、私はもうひとつの用件を桜庭さんに伝える為、俯きかけていた顔を上げた。
「あの」
「まだ何かあるのか?」
桜庭さんが車の扉を開けながら私を見る。
きっと、早く戻って社長に報告したいのだろう。
私もそれを知っていて長く引き止める気はなく、慌てて頭を下げた。