溺愛オフィス
「私に仕事して欲しくないの?」
「KAORI、何バカなことを──」
「買ってきますね」
松岡さんの制止する声を遮って、私は椅子に置いていた鞄を手にした。
ポップコーンを買ってきたら仕事をする約束はしていない。
けれど、ここで断れば、仕事へと繋がる可能性はゼロになる。
頑張ると、挑戦すると決めたから。
「急いで行ってきます!」
私は、KAORIさんと松岡さんに会釈して、事務所を飛び出した。
電車に乗って二駅。
お店について、長蛇の列に並んで。
フレーバーについてKAORIさんからリクエストはなかったから、とりあえず全てのフレーバーを注文した。
紙袋に入れてもらい、急ぎ、KAORIさんのいる事務所へと戻る。
そして、受付でKAORIさんと松岡さんの名前を出した私は、数秒後……
「……そう、ですか」
ガックリと肩を落とした。