溺愛オフィス
「柊奈さん、休憩入るって」
壮介君から伝えられた伝言に、私は頭を上げた。
今日は既存ブランドの展示会準備の為、壮介君や他のスタッフと一緒にショールームに来ている。
私は明日配るノベルティの準備していた手を止めて、腕時計を見た。
12時37分。
桜庭さんが日本を発つ時間まで、あと四時間もない。
もう、会えなくなるのなら、せめて見送りたかった。
桜庭さんの口から話して欲しかった。
別れの時間が迫れば迫るほど、想いが強くなる。
だけど、仕事を投げ出すことはできない。
桜庭さんだって、バイヤーと仕事をしている間はリアライズの社員として動くはず。
会えなくても、まだ繋がりは切れてない。
まだ、切れてないけど。
連絡だってつくだろうけど。
いつかは、それさえもなくなる。
そう考えると、みんなで食べる美味しい昼食も、なかなか喉を通らなくて。
それでも必死に噛んで、飲み込んで……
結局、頼んだランチは半分しか食べれず、みんなに体調が悪いのかと心配されてしまった。
私は大丈夫ですと答えて、みんなと共にショールームに戻る。