溺愛オフィス
「よし、早めに終わるようにピッチ上げてこう!」
誰かが言って、各自また準備作業を再開。
チラリと腕時計に目をやれば、時刻は1時40分を過ぎたところで。
……せめて、電話だけでもしようかと思い立った刹那。
私の隣に、壮介君が立った。
壮介君はノベルティに手を伸ばし、作業を始める。
「1人でできるよ?」
壮介君だって自分の仕事があるはずだ。
だから手助けはいらないと言おうとしたら。
「行ってきなよ」
「……え?」
「成田。今ならまだ間に合うでしょ」
壮介君は私を見ず、ノベルティに視線を落としながら声にした。
行ってきなって……
そんなこと、言われても。