溺愛オフィス
「仕事、投げ出せないよ」
「投げ出さないと、後悔するんじゃない?」
「そう……かも、しれないけど……」
壮介君が、背中を押してくれてる。
それはとても珍しいことで、今動かないとならない気に十分させられた。
でも、社会人としての理性が、駆け出そうとするあと一歩を縛り付けていて動けずにいれば──
「俺が好きになった柊奈さんは、誰かの為に一生懸命な人だけど、たまには、自分の為に一生懸命になってもいいんじゃない?」
いつも意地悪な壮介君が、柔らかい笑みを浮かべて。
「大丈夫。今日だけ特別、俺がフォローしとくから」
行っておいでよ。
強く
優しく
私の足を縛り付けていたものを
解いてくれた。