ハートブレイカー
「みて!これ、じいじがつくってくれたんだよ」

新聞紙で作られた兜をかぶった直哉が、得意気な顔で私たちに見せてくれた。
少々フニャッとしているけど、見た目は立派だ。
とても上手に折られている。
会長さんは、手先が器用な人なんだろう。

「わぁ、ステキね。ありがとうございます」
「いやいや。久しぶりに作ってみたが、意外と覚えているものだな」

そう言った会長さんは、満足気な顔をしている。
会長さんは温和な人柄で、私にあれこれと小言は言ってこない。
それが素なのかどうかは、実のところ分からない。
細かいことは気にしないタイプでありながら、何気に細部には目を光らせている。
そういう矛盾した面を、たくさん持ってる人のようだから。

でなきゃ、あの海堂商事のトップに立つことなんてできないよね。

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